研究集会「量子暗号理論と耐量子暗号」



Workshop on Quantum Cryptography and Post-Quantum Cryptography

早稲田大学

2022年3月18日(金)


プログラム

講演時間 招待講演者 所属 講演タイトル
09:55-10:00 開会の挨拶
10:00-11:00 縫田光司 九州大学 耐量子計算機暗号:量子コンピュータ時代の安全な情報通信に向けて
11:00-12:00 安田雅哉 立教大学 最短ベクトル問題を解くための格子基底簡約とその大規模並列化
13:30-14:30 細山田光倫 NTT 量子アルゴリズムを用いた共通鍵暗号技術への攻撃について
14:30-15:30 安永憲司 東京工業大学 セキュリティ定量化のための理論的枠組み
15:40-16:40 河内亮周 三重大学 秘密同時通信における近年の進展について

開催場所

Zoom によるオンライン開催

講演要旨

耐量子計算機暗号:量子コンピュータ時代の安全な情報通信に向けて

縫田光司(九州大学)

現在利用されている暗号技術の多くは、解読を試みる攻撃者がもし計算を
永遠に続けられればいずれは解読できるけれども、現実に実行可能な計算の
範囲内では解読できないように設計されています。ここで、現在世界的に
開発が進められている量子コンピュータの大規模化が成功すると、この
「現実に実行可能な計算の範囲」が広がるため、暗号技術の安全性への
影響が懸念されています。今回の発表では、量子コンピュータ時代の到来後も
安全な暗号技術の研究分野について概説を行います。[講演スライド]

最短ベクトル問題を解くための格子基底簡約とその大規模並列化

安田雅哉(立教大学)

耐量子計算機暗号候補である格子暗号の本質的な安全性は最短ベクトルや
最近ベクトルなどの格子問題の計算量困難性に依存している。一方、任意
の与えられた格子基底から、各ベクトルが短くかつ互いに直交に近い基底に
ユニモジュラ変換する格子基底簡約アルゴリズムは格子問題を効率的に解く
強力なツールである。本講演では、代表的な格子基底簡約アルゴリズムを
紹介すると共に、その大規模並列化アプローチと最短ベクトル問題に対する
求解実験結果について紹介する。[講演スライド]

量子アルゴリズムを用いた共通鍵暗号技術への攻撃について

細山田光倫(NTT)

近年、RSA暗号や格子暗号などに代表される公開鍵暗号技術のみならず、ブロック暗号やハッシュ関数などの共通鍵暗号技術に対しても量子アルゴリズムを用いた攻撃が盛んに研究されている。本講演では、そもそも共通鍵暗号技術への攻撃の研究がどのようなものか、またどのような量子アルゴリズムが攻撃に応用できるのかという基本的な事柄から説明したのち、共通鍵暗号技術への量子アルゴリズムを用いた種々の攻撃を概観する。

セキュリティ定量化のための理論的枠組み

安永憲司(東京工業大学)

暗号技術のセキュリティの強度を表す指標としてビットセキュリティと呼ばれるものがある.ある技術が120ビットセキュリティをもつとは,その技術を破るために 2120 回程度の演算が必要なことを意味する.Watanabe-Yasunaga (Asiacrypt 2021) において,操作的な意味をもつ量としてビットセキュリティを定式化する枠組みを導入した.その結果,秘匿性の定義などで使われる判定タイプの安全性では,攻撃者が識別する「確率」ではなく,攻撃者の「次数 1/2 の Rényi 情報量」を評価すべきであることが明らかになった.その結果,Leftover Hash Lemma において,一様分布との近さを Hellinger 距離で測ると,全変動距離を用いて同じビットセキュリティを保つ場合に比べ,エントロピーロスを半減できることも明らかになった.本講演では WY21 の枠組みならびにこれらの結果について紹介する.[講演スライド]

秘密同時通信における近年の進展について

河内亮周(三重大学)

秘密同時通信(Private Simultaneous Messages)はある種の制限を課された秘密計算である.秘密同時通信プロトコルにおいて,参加者は自身の秘密入力と参加者間の共有乱数から生成したメッセージを評価者に一度だけ送信し,評価者は予め定められた関数の秘密入力に対する出力値を計算する.このとき評価者に出力値以外の情報が漏れていないことが要請される.この単純なモデルにおいて,情報理論的観点から通信複雑度などのプロトコルの効率性や計算可能な関数の一般性,そして分割可能乱択符号化,非対話型秘密計算といった他のモデルとの関連性が広く研究されている.本講演ではそれらに関する研究の近年の進展,ならびに,講演者と西村治道氏(名古屋大学),吉田真紀氏(NICT)との共同研究で得られた乱数複雑度と通信複雑度の関係や量子通信モデルでの通信複雑度に関する成果を紹介したい.[講演スライド]

組織

組織委員:小柴健史,高島克幸

本研究集会に関する問い合わせは小柴健史まで.
3月4日午前9時までに参加登録していただいた方にはリンク情報をメールしましたが,もし届いていない場合は連絡下さい.

本研究集会は,光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)Flagshipプロジェクト「知的量子設計による量子ソフトウェア研究開発と応用」のサポートを受けています.

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